「“言わなくてもわかる”はもう通じない──伝わる組織は空気と言語の二刀流」
こんにちは、
透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
「察してほしい」が通じない時代に
「空気を読め」
「それくらい言わなくてもわかるだろう」
かつて、こうした“以心伝心”を前提にしたコミュニケーションが、日本の職場では当たり前でした。
しかし今──
若手社員が「それは説明されていません」と言う
多様なバックグラウンドの人材が入社してくる
リモートワークで空気を感じ取れない場面が増える
そんな中で、「言わなくてもわかる」は、組織運営の大きなリスクになりつつあります。
いま必要なのは、“空気”と“言葉”を両立させる二刀流の組織運営です。
空気だけでは伝わらない
言葉だけでも伝わらない
「空気づくり」の大切さを伝えている私が、
あえて言います。
空気“だけ”では、伝わらない時代になった。
同時に、言葉“だけ”では、人は動かない。
Googleカレンダーに入れても、言葉で指示しても、
“空気”が伴っていなければ、部下の本気には火がつかないのです。
つまり、これからの経営・マネジメントに求められるのは、
空気と言語のハイブリッドマネジメントです。
空気型コミュニケーション vs 言語型コミュニケーション
違いを整理すると、以下のようになります。
項目 | 空気型 | 言語型 |
手段 | 表情・沈黙・雰囲気・空気感 | 言葉・文章・数字・明示化 |
特徴 | “感じ取る”が前提 | “明文化する”が前提 |
強み | 瞬時に情緒が共有されやすい | 誤解が少なく、再現性が高い |
弱み | 世代や文化で解釈がズレる | 情報は伝わっても温度が伝わらない |
相互関係 | 空気があるから、言葉が届く | 言葉があるから、空気が深まる |
“言葉にできる空気”がある会社は強い
透明資産経営が目指すのは、
「空気を言語化し、言葉を空気に変える」組織づくりです。
具体的にどういうことか。以下のような取り組みが該当します。
◎【理念・価値観を“日常の言葉”に落とし込む】
「誠実とは、目の前の人を後回しにしないこと」
「挑戦とは、まず“やってみる”と口にすること」
抽象語ではなく、“現場で使える定義”に変換することが重要です。
◎【空気の“感じ”を言葉にする文化を育てる】
「なんか、今日の打合せちょっと重かったよね」
「最近、部内が少し静かすぎる気がする」
「この間の歓迎会の空気、すごくよかったですね」
言葉にしないと、空気はただ“通り過ぎるだけ”になります。
◎【フィードバックは“空気と言葉のセット”で】
「あの提案、すごく挑戦的でよかったよ(空気)」
+「特に、リスクの整理の仕方が論理的だった(言語)」
どちらかだけでは不完全。感情と言語のバランスが重要です。
<実践事例>空気と言語の二刀流で変わった企業
①建設業H社(社員数40名)
職人と事務方の対立が続き、空気が悪化。
「察しろ」文化が強く、若手が次々に辞めていた。
改革として実施したのは:
「感じた空気」を週1で振り返る“空気ログ”の導入
社内掲示板に“空気と言語の対話例”を投稿
幹部が率先して「言葉にしよう会議」で発言練習
半年後、「言葉を交わせる安心感」が定着し、
職場内コミュニケーションの満足度が80%→96%に上昇。
②サービス業I社(店舗数6)
接客が良いのに「クレーム率が下がらない」問題。
原因は「伝えるべきことを曖昧にしていた」こと。
空気で察する文化が、“お客様対応のズレ”を招いていた。
改革内容
・“接客時の大切にしている空気”を言語化(マニュアル化せず、価値観共有)
・クレーム事例を、空気と表現の2軸で振り返る会議を導入
結果、クレーム率が約40%減少。
「伝え方が変わった」と顧客アンケートでも高評価に。
「空気と言葉」を組織文化として設計する
この二刀流は、属人的なセンスではなく、経営で設計可能な文化です。
そのために必要な仕掛けは以下です。
- 空気を可視化する「KAI(Key Atmosphere Indicator)」の導入
→ 毎週の空気温度、発言量、笑顔頻度などの定性計測
- 言語化練習の場としての「理念対話ミーティング」
→ 経営理念・価値観について、実体験と結びつけて話す場
- 「空気と言葉のズレ」の事例共有
→ 良かれと思った沈黙が、相手には“無関心”と映った etc…
すべては、「伝える」から「伝わる」へ変えるための仕掛けです。
最後に──空気と言葉で、組織は深くつながる
空気を整える。言葉で伝える。
この二つを自在に使える組織は、強くしなやかです。
透明資産経営とは、まさにこの“二刀流の経営資源”。
空気が土台、言葉が橋。
どちらもなければ、社員も顧客も渡ってはきてくれません。
“伝わる経営”を、空気と言葉の設計から始めてみませんか?
―勝田耕司