「“空気”は測れる──数字に表れない『透明資産』の見える化手法」
こんにちは、
透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
経営者の違和感「うまくいってるのに、なぜか気になる…」
売上は上がっている。
社員も辞めていない。
クレームも少ない。──それなのに、何かが引っかかる。
「全体の雰囲気が少し硬くなってきた気がする…」
「以前より、社員同士の会話が減ったような…」
この“かすかな違和感”は、数字には出てこないものの、放っておけば必ず業績に影響してくる兆候です。経営者が本能的に察知する「空気の変化」。これこそが、『透明資産』の改善サインです。
しかし──
“空気”は感覚的で、測れない。
だから、放置される。
今回はこの“測れない資産”をどう見える化し、経営に活かしていくかについて具体的に解説します。
『透明資産』とは何か?
まず再確認しましょう。
『透明資産』とは、企業の“空気感”を意図的に設計・運用し、業績向上や組織活性化に直結させる独自の仕組みです。
信頼される“社風”
感じのいい“空間”
顧客が離れない“雰囲気”
これらはすべて、数字では測れないが、明らかに業績に影響する力です。いわば、「見えないけれど確かにある資産」。だからこそ、それを“見える化”しなければ、改善も再現もできません。
見える化の第一歩は「空気の状態を定義する」こと最初に行うべきは、「空気が良い/悪い」の言語化です。たとえば、以下のように状態を具体化します。
【空気が良い状態】
自由に意見が言える
挨拶が自然に飛び交う
雑談や笑顔がある
目的意識が共有されている
違和感を口にできる
【空気が悪い状態】
発言が減る・黙る人が増える
同調圧力が強まる
チームに“正解探し”が蔓延する
雑談がなくなる
上司の顔色を伺う行動が増える
このように、“状態”を言葉で定義することが、見える化への第一歩となります。
実践①:空気温度サーベイ(週1アンケート)
空気感を可視化するシンプルな方法が、「空気温度サーベイ」です。
社員に、週1回以下の5項目だけを記入してもらいます。
《空気温度サーベイ(例)》
今週の社内の空気感を10点満点で言うと?
発言・提案しやすい雰囲気だったか?
上司や同僚のリアクションに安心感があったか?
小さな「ありがとう」が飛び交っていたか?
空気をよくするために、自分が意識したことは?
集計はGoogleフォームやLINE WORKSなどで十分。グラフ化していくことで、数値的に“空気の流れ”が見えるようになります。
これは、KPIでもKGIでもない、KAI(Key Atmosphere Indicator)です。
実践②:「空気の現象記録」を日報に組み込む
見える化の第2ステップは、行動記録による定性データの可視化です。
一般的な日報に、以下のような記述欄を設けます。
今日の現場で起きた「いい空気」「よくない空気」、会話・表情・沈黙・雰囲気の変化など、感じたこと、自分が空気に与えた影響(+/-)この記録を続けていくと、空気の流れと成果の因果関係が見えてきます。
たとえば──
「月曜朝の朝礼の温度感が悪い週は売上が下がる」
「〇〇部長がいる打合せは発言が増える」
「新人が雑談に入れるかどうかが定着率に直結している」など。
実践③:「空気リーダー」を任命する
社員の中に“空気の観察者”を配置します。
これは、マネージャーや上司とは別軸で運用されます。
社内の会話の質・量を観察、空気の乱れをメモする、状況に応じてフィードバック、「空気が気になるシーン」を共有する仕組み
こうした見えないものを見えるように記録する人がいることで、組織全体に「空気を意識する文化」が根づいていきます。
なぜ、空気の見える化が必要なのか?
理由は明確です。
空気は、目に見えないから壊れるのが早い。しかし、数字に出るのは遅い。気づいたときには、
「辞めていた」
「顧客が離れていた」
「組織が動かなくなっていた」
──では遅いのです。
だからこそ、“兆し”の段階で空気を測定し、改善のPDCAを回す必要があります。
最後に──空気は、数字にならないが数字をつくる
売上・離職率・CSスコア……それらはすべて、“空気の結果”です。だから、空気の可視化は経営の土台になります。それが、『透明資産』の本質です。
見えないものを見えるようにする。
それが、真のマネジメントであり、組織の未来を守る技術です。
ー勝田耕司